アメリカへの留学や研修を検討されている方にとって、ビザの選択は渡米後のキャリアと生活に直結する重要な問題です。なかでも、教育と実務経験の両立を目指す方には、J-1ビザ(交流訪問者ビザ)が有力な選択肢となります。単なる学術プログラムにとどまらず、一定の条件下での就労機会も認められているからです。
本稿では、J-1ビザの概要・カテゴリー・就労可能性・注意事項に加え、2024年〜2026年にかけての重要な制度変更についても解説します。
J-1ビザとは
J-1ビザは、教育・文化交流プログラムを通じてアメリカと諸外国の相互理解を促進することを目的とした非移民ビザです。1961年に制定された「相互教育文化交流法(Mutual Educational and Cultural Exchange Act)」に基づいており、米国国務省(U.S. Department of State)が監督しています。
F-1ビザ(学生ビザ)と異なり、J-1ビザは学術プログラムだけでなく、インターンシップ・研修・医療研修・教員交流など多様なカテゴリーをカバーしており、プログラムの性質に応じた就労機会が認められているのが大きな特徴です。
J-1ビザの主なカテゴリー
J-1ビザの対象となるプログラムは、米国国務省が指定する以下のカテゴリーに分類されます。
- 大学生・大学院生(College and University Student)
- 研究者・教授(Research Scholar / Professor)
- 短期研修生(Short-Term Scholar)
- インターン(Intern)/トレイニー(Trainee)
- 医療研修生(Alien Physician)
- 教師(Teacher)
- キャンプカウンセラー(Camp Counselor)
- オペア(Au Pair)
- サマーワーク&トラベルプログラム参加者(Summer Work Travel)
それぞれのカテゴリーで、在米期間・就労範囲・スポンサー要件が異なります。自身の目的に合ったカテゴリーを正確に選択することが、ビザ申請の成否を左右します。
J-1ビザにおける就労の可能性
J-1ビザの大きな魅力は、一定の条件下での就労が認められている点です。ただし、就労の範囲・条件はカテゴリーごとに厳格に規定されており、スポンサーの事前承認なく就労することは許可されていません。
1. 学生カテゴリーにおける就労
キャンパス内就労:「College and University Student」カテゴリーに該当する場合、スポンサーの承認を得た上で、キャンパス内で週20時間までのパートタイム勤務が認められることがあります。学期中は週20時間、長期休暇中はフルタイムでの就労が可能です。ただし、キャンパス外での就労は、スポンサーおよび大学の許可がない限り認められません。
アカデミック・トレーニング(Academic Training):専攻分野に直接関連する実践的な就労経験を得るための制度です。在学中および修了後に一定期間の就労が認められます。
- 原則として最大18ヶ月(または在学期間のいずれか短い方)
- 博士課程修了者は、在学中・修了後それぞれ最大18ヶ月、合計最大36ヶ月
- STEM分野の学部生・修士課程在籍者:国務省の特例措置により、最大36ヶ月まで延長可能(本措置は2026年6月30日までの適用。延長の可否については最新情報を確認のこと)
就労内容は専攻と直接関連し、かつ教育的意義が明確であることが求められます。また、申請は修了の少なくとも30日前には行うことが推奨されています。
2. インターン・トレイニーカテゴリー
インターンシップ・研修を目的とする方には、以下の2つのカテゴリーが設けられています。
インターン(Intern):現在在学中または卒業後12ヶ月以内の方が対象です。専攻に関連する分野での最長12ヶ月のインターンシップが認められます。
トレイニー(Trainee):学士相当以上の学歴を持ち、かつ卒業後1年以上の職歴がある方が対象です。最長18ヶ月(ホスピタリティ関連は12ヶ月)の研修が認められます。
いずれも、事前にForm DS-7002(トレーニング計画書)を提出し、プログラムの教育的・職業的価値を明示する必要があります。単純作業の繰り返しや、通常業務における人員補充を目的とした就労は認められません。
3. サマーワーク&トラベル
大学生が夏季休暇中(通常最長4ヶ月)に米国内で季節的就労を行いながら文化体験を深めるプログラムです。リゾート・レストラン・テーマパーク等での就労が中心となります。文化交流の要素が不可欠であり、就労のみを目的とした利用は認められません。
4. 専門職カテゴリー
研究者・教授・医師等の専門職カテゴリーでは、米国内の認定機関における教育・研究活動が可能です。医療研修生(Alien Physician)については、ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)による承認および特別な手続きが必要です。
就労に関する制限・注意事項
J-1ビザによる就労には、以下の制限が伴います。これらを遵守しないと、ステータス喪失や将来のビザ取得に重大な影響が生じます。
- プログラムの主目的はあくまで「教育・文化交流」であり、就労は補助的な位置付けであること
- いかなる就労もJ-1プログラムスポンサーの事前承認が必要であること
- 就労が学業・研修プログラムの目的を妨げないこと
- 就労内容がプログラムの専攻・研修分野と直接関連していること
【重要】近年の制度変更(2024〜2026年)
J-1ビザおよびその関連制度について、2024年末から2026年にかけて重要な変更・検討が進んでいます。渡米を計画されている方は特にご注意ください。
① Skills List(特定技能リスト)の改訂(2024年12月)
米国国務省は2024年12月、「二年間の本国帰国義務(Two-Year Home Country Physical Presence Requirement / 212(e))」の適用対象を定めるSkills Listを改訂しました。この改訂により、中国・インド・韓国・ブラジル等の国籍者が対象国リストから除外されました。Skills Listのみを根拠に212(e)が課されていた場合、遡及的に本国帰国義務が免除される可能性があります。すでにJ-1ビザを取得・利用中の方も含めて影響を受ける可能性があるため、DS-2019や既存のビザの記載内容に関係なく、最新のリストと照らし合わせて確認することが重要です。
② Duration of Status(D/S)廃止の動き(2025年〜2026年検討中)
現在、F-1・J-1を含む特定の非移民ビザ保有者に適用されている「Duration of Status(D/S)」制度の廃止が連邦政府によって提案されています。D/S制度は、在籍・在学が継続している限り特定の終了日なく米国に在留できる仕組みですが、廃止された場合は入国時にI-94に記載された固定日付がビザの有効期限となります(通常2〜4年程度)。期限延長にはUSCISへの申請が必要となる見通しです。
2025年9月末までのパブリックコメント期間には3万4,800件超の反対意見が寄せられており、制度の実施は不確定な状況です。現時点では2026年9月以降の新入学者から適用される見通しとされていますが、詳細は流動的です。渡米後の在留管理に直接関わる重要な変更ですので、動向を注視する必要があります。
③ STEM分野Academic Training延長措置の期限(2026年6月30日)
学部・修士レベルのSTEM分野在籍J-1学生に対する最大36ヶ月のAcademic Training延長措置は、2026年6月30日までの時限的措置です。同日以降の取り扱いについては、現時点で国務省からの正式なアナウンスはありません。この措置を利用する予定がある方は、期限前に手続きを完了する必要があります。
二年間の本国帰国義務(212(e))について
J-1ビザの保有者の一部には、プログラム終了後に2年間は母国に戻る義務が課されることがあります。この義務が課される場合、H-1B・L-1ビザの取得、永住権(グリーンカード)の申請、米国内での在留資格変更などが制限されます。なお、この義務は「帰国を強制するもの」ではなく、「帰国しない場合に特定の移民上のメリットを得られなくする」ものです。
212(e)が適用される主な条件は以下のとおりです。
- 米国政府または母国政府の資金援助を受けてプログラムに参加した場合
- 改訂前の国務省Skills Listに掲載された技能分野の出身国国籍者である場合(2024年12月改訂により対象国が縮小)
- 医療研修生(Alien Physician)として参加した場合
義務の免除(Waiver)申請は可能ですが、審査が厳格であり、かつ審査期間が長期にわたることもあります。Waiverが認められた場合、以後のJ-1プログラム延長は認められなくなる点にも注意が必要です。
J-1ビザ申請の主な要件
J-1ビザを申請するにあたり、以下の要件を満たしていることが求められます。
- 適格なスポンサー団体からの受入承認(Form DS-2019)の取得
- プログラム期間中の十分な財政能力の証明
- 英語能力の証明(TOEFL・IELTSなど。スポンサーの要件による)
- 母国との結びつきを示す書類(帰国意思の裏付け)
- 国務省の最低基準を満たす医療保険への加入
- DS-160(非移民ビザ申請書)の記入および査証申請料の支払い
- 在外米国大使館・領事館での面接
まとめ:J-1ビザは「実体験」を通じたキャリア形成に有効
J-1ビザは、学術的な学びと実務経験・文化交流を組み合わせた、きわめて有用なビザカテゴリーです。インターンシップや研究活動を通じて実践的なスキルを養いながら、国際的な視野を広げることができます。
ただし、J-1ビザに関する規則は複雑であり、近年も制度変更が相次いでいます。無断就労・不適切な活動はビザステータスの喪失につながるおそれがあり、将来の移民・非移民ビザ取得にも影響を及ぼします。また、上述のD/S廃止の動きが具体化した場合、在米中の在留管理のあり方が大きく変わる可能性があります。
最新の規則・要件については、必ず米国国務省の公式サイト(https://j1visa.state.gov)または最寄りの米国大使館・領事館でご確認ください。
当事務所のサポート
当事務所では、J-1ビザをはじめとする各種非移民ビザの申請サポートを行っております。インターンシップ・研究活動・医療研修など、目的に応じた個別の戦略立案・書類作成支援を通じて、スムーズなビザ取得をお手伝いします。また、近年の制度変更(Skills List改訂・D/S廃止の動きなど)が個別のケースに与える影響についても、具体的なアドバイスが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和
