「H-1Bビザを取りたいけれど、抽選に当たる確率はどのくらいか」「抽選制度が変わったと聞いたが、自分に有利なのか不利なのか」——こうした質問を日々いただきます。2026年のH-1Bビザを取り巻く環境は、ここ数年で最も大きく変化しています。賃金連動型の重み付き抽選制度の導入、$100,000の追加費用、FY2026の登録者数の大幅減少など、知らずに臨むと大きな損をする情報が多数あります。このページでは2026年6月時点の最新状況を、実務目線でまとめます。
目次
- H-1Bビザとは
- 年間上限枠(キャップ)と最新の抽選結果
- 最大の変更点:賃金連動型の重み付き抽選(FY2027〜)
- 新設された$100,000の追加費用
- FY2027申請スケジュール
- F-1学生・OPT保有者のキャップギャップ制度
- 業種別の動向と注目分野
- 弁護士に相談すべきケース
1. H-1Bビザとは
H-1Bビザは、アメリカで「専門職(Specialty Occupation)」に就くための非移民就労ビザです。学士号(4年制大学卒業)またはそれに相当する専門的実務経験が求められ、その知識を活かした職務内容であることが必要です。
有効期間
初回3年間、最長6年間まで延長可能。グリーンカード申請中はさらに延長できるケースもある。
スポンサー制
申請はアメリカの雇用主が行う。個人では申請できない。
家族の帯同
配偶者・子はH-4ビザで帯同可能。I-140承認など一定条件を満たした場合、配偶者は就労許可(EAD)取得可。
デュアル・インテント
非移民ビザながら、永住権(グリーンカード)取得の意思を同時に持つことが認められている。
2. 年間上限枠(キャップ)と最新の抽選結果
H-1Bビザの年間上限は議会によって定められており、現在も以下のとおりです。
年間上限枠
- 一般枠:65,000件
- 米国大学院修了者枠(マスターズキャップ):20,000件(米国の修士号以上保有者が対象)
- キャップ免除:米国内の高等教育機関、それに関連する非営利団体、非営利または政府系研究機関に雇用される場合は上限対象外
FY2026(2025年10月雇用開始)の結果
FY2026では、ユニーク登録者数が約470,342人と前年(758,994人)から大幅に減少しました。これは2024年の不正防止強化策と重複登録の排除が功を奏した結果です。抽選では118,660人が選出され、選出率は約35.3%。第1回抽選のみでキャップが充足され、第2回抽選は実施されませんでした。
FY2027(2026年10月雇用開始)の状況
2026年3月4日〜19日に電子登録が行われ、3月31日にUSCISがFY2027分のキャップ充足を確認しました。今回から後述の賃金連動型抽選が初めて適用されており、従来の完全ランダム抽選とは大きく異なる構造になっています。
3. 最大の変更点:賃金連動型の重み付き抽選(FY2027〜)
2026年2月27日 施行これは近年最大の制度変更です。DHSが2025年12月23日に最終規則を発表し、2026年2月27日に施行されました。FY2027シーズン(2026年3月登録分)から、これまでの完全ランダム抽選が廃止され、DOL(米国労働省)の賃金水準(Wage Level I〜IV)に応じて当選確率が変わる仕組みに変わりました。
| 賃金レベル | 位置づけ | 抽選での有利・不利 |
|---|---|---|
| Level IV | 上位(熟練・高経験) | 最も有利(当選確率が高い) |
| Level III | 中上位 | 有利 |
| Level II | 中位 | やや不利 |
| Level I | エントリーレベル | 最も不利(当選確率が低い) |
実務上の注意:提示する賃金が高ければ当然有利ですが、Level IやIIに分類される職種でも給与が市場平均を大きく上回るケースがあります。DOLの賃金データとの分類がずれないよう、SOCコードや勤務地の設定を慎重に行う必要があります。雇用主と弁護士が早い段階で連携することが重要です。
なお、修士号以上の学歴保有者は引き続き二段階選抜(マスターズキャップ→一般枠)の恩恵を受けられます。高学歴+高賃金レベルの組み合わせが最も有利になる構造です。
4. 新設された$100,000の追加費用
2025年9月21日以降 適用2025年9月の大統領令により、一部のH-1Bペティションに$100,000の追加費用が課されるようになりました。ただし適用範囲には重要な例外があります。
$100,000追加費用の対象と免除
- 対象:米国外にいる申請者へのH-1Bペティション、および領事処理(Consular Processing)を申請する場合
- 免除:米国内でのステータス変更(Change of Status)申請——特にF-1学生がOPTからH-1Bに移行するケース
- 免除:2025年9月21日以前に発行済みのH-1Bビザ保有者
注意:ステータス変更で免除を受けるはずが、書類の不備やキャップギャップの失効などにより自動的に領事処理に切り替わると、この$100,000費用が発生するリスクがあります。F-1学生は特に、OPTの有効期限管理と申請タイミングに細心の注意が必要です。
なお、通常のUSCIS申請手数料も2026年3月1日から改定されており、プレミアム処理費用は現在$2,965となっています。
5. FY2027申請スケジュール
FY2027(2026年10月1日雇用開始)の申請スケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年1〜2月 | 雇用主が職務内容・賃金レベル・勤務地を確定。賃金分析を早めに実施(賃金連動型抽選に向けた準備) |
| 2026年2月27日 | 賃金連動型抽選ルール施行 |
| 2026年3月4〜19日 | 電子登録受付期間(myUSCISポータル経由、登録費用$215/人) |
| 2026年3月31日 | USCISがFY2027キャップ充足を確認・当選者への通知 |
| 2026年4月1日〜 | 当選者によるH-1B申請書(I-129)の提出(90日間の提出窓口) |
| 2026年10月1日 | 雇用開始日(H-1Bステータス発効日) |
FY2028(2027年10月雇用開始)の登録は、2027年3月上旬に開始予定です。今回の抽選で選ばれなかった方は、次のチャンスに向けた準備を早めに始めることをお勧めします。
6. F-1学生・OPT保有者のキャップギャップ制度
F-1学生がOPTからH-1Bに移行する際に重要なのがキャップギャップ(Cap-Gap)制度です。OPTの有効期限が10月1日より前に切れてしまう場合でも、適切な要件を満たせば就労・滞在を継続できます。
キャップギャップの主なポイント(2025年1月のH-1B近代化規則以降)
- OPT期限前にH-1B申請(ステータス変更)が適切に提出された場合、F-1ステータスと就労認可が翌会計年度4月1日(2027年4月1日)まで自動的に延長される
- この延長はステータス変更(Change of Status)申請の場合のみ適用。領事処理(Consular Processing)には適用されない
- キャップギャップ期間中に米国外に出国すると、ステータス変更の申請が無効になる可能性がある
- STEM OPTを保有している場合、36ヶ月の期間内で最大3回の抽選機会を得られる
$100,000費用との関係:ステータス変更申請であれば$100,000追加費用は免除されますが、書類不備などでUSCISがステータス変更を認めず領事処理に切り替わると、免除が受けられなくなります。F-1学生は特に、OPT有効期限の管理と申請スケジュールの調整を弁護士と早めに確認してください。
7. 業種別の動向と注目分野(2026年)
賃金連動型抽選への移行により、業種ごとの有利・不利がより明確になってきています。高賃金を提示しやすい業種ほど、制度上の恩恵を受けやすい構造です。
需要が高く、高賃金水準を提示しやすい分野
- AI・機械学習エンジニア:引き続き最大の需要。高い給与水準からLevel IIIまたはIVに分類されやすく、新制度のもとで有利
- サイバーセキュリティ専門家:サイバー攻撃の増加に伴い需要拡大。経験者は高賃金レベルに分類されることが多い
- バイオテクノロジー・医療研究者:医療研究の加速化により需要増。大学・研究機関ではキャップ免除の可能性も
- フィンテック・量子コンピューティング専門家:高度スキル人材への需要が旺盛
- クラウドアーキテクト・データエンジニア:企業のDX推進で継続的な需要
キャップ免除が適用される可能性がある雇用形態
- 米国内の大学・大学院(教授・研究者ポジション)
- 大学に関連する非営利団体や研究機関
- 政府系研究機関(NIH、DOEなど)
キャップ免除に該当する場合は、抽選に参加する必要がなく、通年でH-1Bの申請が可能です。学術・研究分野を検討している方は、この点を雇用主と確認することをお勧めします。
8. 弁護士に相談すべきケース
H-1Bの手続きは雇用主主導で進みますが、以下のような状況では、申請者本人も移民弁護士に早めに相談することを強くお勧めします。
特に注意が必要な状況
- 専攻・学位と職務内容が完全に一致しない(関連性の説明が必要なケース)
- 複数の勤務地、複数の雇用主、または出向・請負形態がある
- OPT有効期限が迫っており、キャップギャップの適用可否を確認したい
- 領事処理か、ステータス変更かの選択で$100,000費用への影響を確認したい
- 過去にビザ拒否・却下・不法滞在歴がある
- キャップ免除(大学・研究機関等)の可能性があるかどうか確認したい
- RSU・ストックオプション等、複雑な報酬体系の下でLCA賃金要件を満たせるか不安がある
- H-1Bからグリーンカード取得を視野に入れており、I-140との兼ね合いを確認したい
2026年のH-1B環境は、賃金連動型抽選・高額追加費用・詐欺防止強化という三つの大きな変化が重なっています。「前年と同じ対応で大丈夫」というアプローチは通用しません。特にFY2027分の申請を控えている方は、今すぐ雇用主・弁護士と戦略を確認することをお勧めします。
日本語でのご相談は、ベイエリア・ロサンゼルスを拠点に対応しています。お気軽にお問い合わせください。
【免責事項】本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを構成するものではありません。移民法は頻繁に改正されるため、最新のUSCISガイダンスおよびDHSの規則を必ずご確認ください。具体的な申請については、資格を有する移民弁護士へのご相談をお勧めします。
カリフォルニア弁護士・日本弁護士 田中良和
(カリフォルニア州拠点:サンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス)