田中良和国際法律事務所|米国ビザ申請サポート

アメリカに住んで働きたい日本人が取得しやすいビザは?

「アメリカに住んで働きたいのですが、一番取りやすいビザは何ですか?」

この質問は、移民法の相談でよく聞かれます。

結論からいうと、誰にとっても取りやすい万能なビザはありません。ただ、日本人の場合、職歴、資金、勤務先などの条件が合えば、比較的検討しやすいのは次のビザです。

  • アメリカで事業を始める人:E-2ビザ
  • 日本企業からアメリカ法人へ転勤する人:E-2 employeeビザまたはL-1ビザ
  • 専門職としてアメリカ企業に採用される人:H-1Bビザ
  • 専門分野で高い実績がある人:O-1ビザ

なかでも、日本人が独立してアメリカで事業を始めたい場合には、まずE-2ビザを検討することが多いです。

E-2は、アメリカで事業に投資し、その事業を経営する人のためのビザです。日本はアメリカとの条約国なので、日本国籍者はE-2を申請できます。米国国務省の条約国一覧にも、日本はE-1・E-2の対象国として掲載されています。

E-2には「最低10万ドル必要」などの一律の最低投資額はありません。実際には、事業を開始するために必要な金額との比較で、十分な投資が行われているかが判断されます。

たとえば、小規模なコンサルティング会社と飲食店では、開業に必要な資金がまったく異なります。そのため、投資額だけを見るのではなく、事業内容、店舗やオフィス、設備、契約、従業員の雇用計画などを含めて判断されます。

また、単に銀行口座に資金を置いただけでは不十分です。会社を設立し、賃貸借契約を締結し、設備を購入するなど、資金が実際に事業へ投入され、原則として取り戻せない状態になっていることが重要です。

E-2は、相当額の投資資金を準備でき、自分で事業を運営したい人には有力な選択肢です。一方、事業の実体が乏しい場合や、本人と家族が生活できる程度の収入しか見込まれない場合には、承認が難しくなる可能性があります。

E-2は、投資家本人だけのビザではありません。一定の要件を満たす日本企業のアメリカ法人で働く社員も、E-2 employeeビザを取得できる場合があります。

ただし、通常の一般職として赴任するだけでは足りません。主に次のいずれかに該当する必要があります。

  • 管理職または監督職に就く
  • 会社の運営に不可欠な特別の技能や知識を持っている

経験年数について一律の最低基準はありませんが、経験が浅い場合には、なぜその人でなければならないのかを具体的に説明する必要があります。日本本社の商品、技術、業務手順、取引先などについて固有の知識を持っていることや、アメリカで代わりの人材を容易に採用できない事情が重要になります。

日本企業のアメリカ進出では、E-2 employeeが比較的よく利用されています。

L-1は、日本の会社から、その親会社、子会社、支店または関連会社であるアメリカ法人へ転勤する場合に利用されるビザです。

原則として、申請前の3年間のうち少なくとも1年間、日本の関連会社で継続して勤務している必要があります。アメリカでの職務も、経営者・管理職であるか、会社に関する専門的な知識を必要とするものでなければなりません。

L-1の利点は、E-2のように申請者の国籍が条約国に限定されないことです。また、日本企業がアメリカに新しい拠点を設立する場合にも利用できる可能性があります。

もっとも、新設会社の場合には、オフィス、資金、事業計画、採用計画などを詳しく示す必要があります。特に小規模な会社では、申請者が本当に管理業務を担当するのか、それとも日常的な実務を自分で行うだけなのかが厳しく確認されます。

H-1Bは、IT、エンジニアリング、会計、金融など、通常は特定分野の大学卒業資格を必要とする専門職のためのビザです。

アメリカの会社から仕事のオファーを受け、仕事内容と本人の大学での専攻が関連していることが基本になります。大学を卒業していない場合でも、一定の実務経験を学歴相当として評価できることがありますが、個別の検討が必要です。

H-1Bの難点は、多くの民間企業について年間発給枠があり、申請希望者が枠を上回る場合には選考を通過しなければならないことです。資格を満たしていても、必ず申請できるとは限りません。

そのため、「アメリカ企業に就職すれば簡単にH-1Bが取れる」とは考えない方がよいでしょう。大学、一定の非営利研究機関など、年間枠の対象外となる雇用主もあります。

O-1は、科学、教育、ビジネス、スポーツ、芸術などの分野で、通常を上回る実績を持つ人を対象とするビザです。

「世界的な有名人でなければ取れない」と思われることがありますが、必ずしもそうではありません。受賞歴、報道実績、業界で重要な役割を果たした経験、高い報酬、論文、審査員経験など、複数の証拠を組み合わせて申請することができます。

スタートアップの経営者、研究者、アーティスト、デザイナー、料理人などでも、これまでの実績によっては検討できます。ただし、単に経験年数が長いというだけでは不十分です。第三者から評価されていることを客観的な資料で示す必要があります。

語学学校や大学に通うためのF-1ビザを、アメリカで働くための入口として考える人もいます。しかし、F-1はあくまで留学のためのビザです。

一定の条件を満たす学内就労、CPT、OPTなどを除き、自由に働くことはできません。特に語学学校の学生は、一般的なOPTを利用できません。

最初から就労や起業が主な目的である場合には、F-1を取得してから何とかするのではなく、E-2、L-1、H-1Bなどの可能性を先に検討した方が安全です。

実務上は、おおむね次のように整理できます。

自分で資金を出して事業を始めるのであれば、E-2が第一候補です。

すでに日本の会社で働いていて、その会社がアメリカへ進出するのであれば、E-2 employeeまたはL-1が候補になります。

アメリカ企業に専門職として採用されるのであればH-1Bですが、年間枠の問題があります。

すでに専門分野で相当の実績がある場合には、O-1を検討できます。

ビザ選びで大切なのは、最初から一つのビザに決めつけないことです。同じ人でも、会社の資本構成、日本での勤務期間、投資できる金額、学歴、職歴によって適切な選択肢が変わります。

また、「取得しやすいビザ」と「その人の将来に合ったビザ」は、必ずしも同じではありません。将来グリーンカードを取得したいのか、家族も一緒に渡米するのか、会社を売却する可能性があるのかといった点も考慮して、渡米前に全体の計画を立てることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別案件についての法律上の助言ではありません。移民法や審査実務は変更されることがあるため、実際の申請にあたっては最新情報をご確認ください。

カリフォルニア拠点(ロサンゼルス・サンフランシスコ・ベイエリア)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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